効果音の特効薬/この章のはじめに~効果音制作に必要なこと~

この章では、サウンドクリエイター視点での効果音制作技術について具体例を挙げながらまとめていきます。

効果音制作についての書籍や公開情報はそもそも少なく、ましてやクリエイターに特化した内容については殆ど見つからないため、必要な考え方や知識を学ぶには、現場での経験に頼ることが多いです。
しかし、クリエイターの効果音制作においては陥りやすい問題の解決や、サウンドプログラム、組み込みを見据えた考え方が必要であり、音作りの範囲や技術も広いものです。
まず始めに、この稿ではクリエイターの現場での効果音制作について必要な考え方についてまとめています。


サウンドクリエイター視点での効果音制作に必要なこと

サウンドクリエイターの現場での効果音制作では、効果音自体の制作技術はもちろん、サウンドプログラミングの知識、企画、ディレクション、スケジューリング能力が必要となります。
このことはサウンドクリエイターの論理力でも触れています。

また映像に対するMA(マルチオーディオ。映像に音声をつける技術を示す和製英語)、に特化した業務とは違い、サウンドクリエイターならではの制作技術も沢山あります。
例えば、ゲームのメニュー画面に特化した音ですと、単純波形を駆使したり、シンセサイザーの扱いが重要になる局面も多く、また、サンプラー的な考え方をしなければならないこともありますし、ユーザーの操作により発音するタイミングがランダムであることを常に意識しなければなりません(例:洞窟を探検するキャラクターが、深い階層に進むほど足音の反響が深くなっていく)

この章では具体的な効果音制作において、音作りについても実例を挙げながら解説していきますが、このコンテンツ全体(知識、ミックス、シンセ、プログラム)と併せてご覧になって頂けると、とても嬉しいですし、実用的です。


サウンドクリエイターの効果音制作において陥りやすい問題点

上記の通り、目先の効果音制作技術に捉われることも問題ですが、効果音の制作技術自体にも陥りやすい問題点があります。

まず大きな点は「素材集の音を使うこと」に捉われてしまうことです。
決して効果音素材集に頼ることを批判するわけではありません。現在においては効果音素材集は多種多様なものがあり、クオリティーも高く、実際に自分ではなかなか録音できないような音(例:リアリティーのある爆発音、通常録音できないような乗り物)は尚更重宝します。

但し、私達が思う「この音はこれ」というものは、効果音の歴史の中で嘘の定番刷り込みをされているものもあります。
例えば日本人が思う「蛙の鳴き声」というのは、二枚貝のこすれる音ですし、遊技機が好きな人の「鷹の鳴き声」はトンビの声かもしれません。
日本の伝統芸能の舞台ではリアルな波の音よりも小豆の音の方がしっくりくるかもしれませんし、逆に最新の映像にそれは合わないでしょう。
同様に素材集の音は各国のイメージがありますし、空気感もまちまちですので、その背景や定番や歴史を知らないと大きな失敗をします。

次に、歴史や実際の録音技術を知らないと新しい発見や応用力がつかないことです。
上記のとおり、私達の刷り込まれた音は、先人が録音という概念のない頃(これを最初に実用化したのは日本です)から実践し、また録音技術が生まれてからはテープの技術、マイクの効果などを駆使し、デジタルに入ってからはデジタルならではの技術を駆使しています。

このことを学ばなければ、
「全く別の音から作りたい音を作るという発想(小豆で波など)」
「素材の質感を変化させて全く違う音に聞かせる発想(テープの再生速度など)」
「世にあるプラグインやデジタル技術の想像外の使い方(ピッチ修正を逆方向に使う、シーケンスフレーズを超高速テンポで扱うなど)」
という発想が生まれません。

一番効果音技術者として残念なことは、
「素材集の音を切り貼りして混ぜて並べて終わり」
「この音がないのでできません、などと思ってしまう」
「他社と同じ音が鳴っている。そのことを恥ずかしいと思わない」
という状態になることです。

この章では、効果音の歴史や技術の変遷、また具体的な制作例も極力発想力を強化できる内容にて綴ります。


効果音技術者は制作以外の知識も求められやすい

上記やサウンドクリエイターの論理力でも述べていますが、サウンドクリエイターの中でも特に効果音制作者は、効果音制作以外の知識が沢山必要になります。
プログラムやミックスやシンセサイザーの取り扱いはもちろんですが、MAをするための映像の知識も必要も必要ですし、ハードを扱うための電気的知識、音響的知識も必要です。
それどころか、音楽に関しては企画仕様が決まればイメージで予め制作を走れることもありますが、なかなか効果音に関しては絵の無い状態で制作は難しいですので(それでもリストベースで作る局面も沢山ありますが。。。)、サウンドクリエイターの中でも殿に最も近い技術者ですから、何でも屋さんになることが多いです。
サウンドに一見関係のなさそうなWEBやサーバーの取り扱いなど、様々な知識を積極的に取り入れる姿勢が大切です。

最後に、もしかしたらサウンドクリエイターとして効果音技術者を志す方の中には、音楽のクリエイターになるのを諦めて、それでもサウンド業務に関わるため効果音技術者を目指した方もいらっしゃるかもしれません。
それは恥ずかしいことや、逃げたということではありません。
そして最初から効果音技術者一本で目指してる方に引け目を感じる必要もありません。

何故なら音楽の知識もまた効果音の技術に役立ちますし、逆に効果音の技術を学ぶと音楽制作の技術も向上するからです。
目指す到達点が違えば、そこに向かうルートも沢山あり、だからこそ色々なタイプのクリエイターがいて、多種多様なサウンドを生み出し、面白いコンテンツができるのです。
ですから大きな視野で胸を張って面白い音を生み出していきましょう。

藤原章人(ZeeF)
株式会社アットチュード 代表取締役/マニピュレーター/サウンドクリエイター/ BGM、効果音、音声組み込み、音声ROM管理、ミキシング、音声ディレクション担当。 関西を中心にゲームコンテンツのBGM、SE、サウンドプログラム制作を行いながら、関西の複数のメーカーのコンシューマーゲーム、遊技機のサウンド制作に携わる。 関東に拠点を移してからはロックバンドのメンバーとしてマニピュレーターを担当し、多くの大規模会場にて公演を行いつつ、クリエイターとして複数の会社と数多くのアミューズメントやゲームサウンド制作、ゲーム会社人材養成所での講師などを行う。 一般社団法人 日本シンセサイザープロフェッショナルアーツ会員。